【重要なお知らせ】スポーツ庁より「夏山登山の事故防止に関する通知」が発出されました

 夏山シーズンを迎えるにあたり、スポーツ庁より「夏山登山の事故防止について(通知)」が全国の自治体、教育機関、登山関連団体等に向けて発出されました。

 この通知では、不適切な天候判断、不十分な装備、無理な登山計画などが遭難事故の主な原因として指摘されています。また、火山地域における噴気・火山ガスへの警戒や、事前の情報収集の重要性も強調されています。

 日本トレイルランニング協会では、この通知の趣旨をふまえ、トレイルランニングにおいても登山と同様に「安全最優先」の意識を持ち、事前の準備と危機管理を徹底することを強く呼びかけます。

 事故を未然に防ぎ、安全で豊かな山の時間を楽しむためにも、下記の「安全登山のために特に注意したいポイント」とあわせて、通知内容を是非ご確認ください。

安全登山のために特に注意したいポイント

 ポイント 内容
 登山地図アプリの活用  スマートフォンで現在地を確認。紙地図も併用し、予備バッテリーも携行。
 入念な登山計画山域・天候・火山情報を事前に確認。装備やエスケープルートも準備。
 余裕ある行動計画無理のない行程・ペースで登山を。定期的な休憩を取りましょう。
 水分補給の目安 体重×行動時間×5mlを目安に水分をこまめに補給。
 常備薬の持参高所や疲労による体調不良に備えて、必要な薬は必ず持参。
 ヘルメット着用転落・滑落・落石に備えて、危険地帯ではヘルメットを着用。

通知文の全文は以下のPDFからご確認いただけます。

▶︎ 夏山登山の事故防止について(スポーツ庁 7ス庁第788号/令和7年7月2日)PDF

世界マウンテン&トレイルランニング公式競技40周年

40年の歴史を祝して

 2025年6月20日、スペイン・カンフランクより、マウンテン&トレイルランニング競技の40年の歩みを称える公式リリースが発信されました。

 今年の9月25日、カンフランク=ピリネオスに世界中から80カ国・1,700人以上の選手が集い、マウンテンランニング公式競技の40年を記念する歴史的な世界選手権が開催されます。

スペインがこの大会を主催するのは今回が初めてであり、スペイン陸上競技連盟(RFEA)のもと、U20、アップヒル、クラシック、ショートトレイル、ロングトレイルの5種目すべてを網羅した統合世界選手権が実現します。

 この競技の歴史は1985年、イタリア南チロルの山岳地サン・ヴィジリオ・ディ・マレッベにて第1回マウンテンランニング世界選手権(当時の名称:ワールドトロフィー)が開催されたことから始まりました。主催は世界マウンテンランニング協会(WMRA)。それから約40年、今年9月、スペイン・ピレネー山脈でその頂点を迎えようとしています。

 当初はアルプスの斜面で始まったこの競技も、距離や年齢区分の拡張、関係機関との連携を経て、トレイルランニングとの統合に至りました。しかし変わらぬのは、選手が自らの脚力と心の力だけで山を登り、下るという“挑戦”の本質です。

 今回の大会は、その原点からの進化を象徴するもの。38人から始まったWMRA単独の大会が、今や約2,000人が参加する5種目の世界大会へと発展しました。現在は、WMRA、IAU(国際ウルトラランナーズ協会)、ITRA(国際トレイルランニング協会)の3団体による共同運営で、世界陸連(World Athletics)の傘下で行われています。スペインはこの記念すべき大会を誇りを持って初めて主催します。

世界マウンテン&トレイルランニング選手権の3つの時代

1985–2019:WMRAによる黎明期  登り(Uphill)、クラシック、ジュニア

 1984年、数か国のヨーロッパ陸連により設立された国際マウンテンランニング委員会(現WMRA)は、1985年にイタリア・サン・ヴィジリオで第1回大会を開催。1,000mを超える急登のみの「アップヒル」と、登り下りを組み合わせたハーフマラソン程度の「クラッシック」の2形式で交互に行われました。

 その後、6~8kmのジュニアレースが導入され、さらに「ロングディスタンス」形式(約45km)も追加されました。アンドレア・マイヤー、マルコ・デ・ガスペリ、ジョナサン・ワイアットといった名選手が、この時代の象徴となりました。

2007–2019:IAU・ITRAによる超長距離への拡張

 WMRAは2004年にSierre-Zinalでロングディスタンスを導入していましたが、真の「ウルトラ」時代の幕開けは2007年、IAUによる80kmのTrail世界選手権(アメリカ・テキサス)開催でした。

 2015年にはITRAも合流し、超長距離レースの地位を確立。スペインのルイス・アルベルト・エルナンドは3連覇(2016〜2018)を達成し、フランスのナタリー・モークレールは初の女子ダブルゴールド(2013・2015)を記録しました。

2019–2025:世界陸連による統合の時代

 2019年、世界陸連がマウンテン&トレイルランニングを正式に認定。WMRA・IAU・ITRAの協力により、隔年開催の統一世界選手権「WMTRC(World Mountain & Trail Running Championships)」が始動しました。

 第1回統合大会は新型コロナの影響で延期され、2022年11月にタイ・チェンマイで開催。以下の5種目すべてが一つの大会として実施されました。

• U20

• アップヒル

• クラッシック

• ショートトレイル(約45km)

• ロングトレイル(約80km)

 2023年はオーストリア・インスブルック/シュトゥーバイ、そして2025年はスペイン・カンフランク=ピリネオスに舞台を移します。

王者たちの系譜 ― 4人の伝説的アスリート

 過去40年で、世界の舞台を彩った4人の選手がいます。

アンドレア・マイヤー(オーストリア)

WMRA最多8度の世界王者。2024年Uphillでも優勝。

ジョナサン・ワイアット(ニュージーランド)

クラシック形式で6度の世界制覇を成し遂げた伝説的存在。

マルコ・デ・ガスペリ(イタリア)

ワイアットの最大のライバルであり、技巧派ランナーの象徴。

ルイス・アルベルト・エルナンド(スペイン)

IAU/ITRA体制のウルトラ競技で3連覇を果たした王者。

カンフランク=ピリネオス2025へ向けて

 1985年の小さな山村での始まりから、マウンテンとトレイル、スピードと持久力、若さと経験が交差する世界規模の競技へと成長してきたこの選手権。その原点には、すべての選手の汗と挑戦の軌跡があります。

 2025年9月、カンフランクの地で新たな章が始まります。サン・ヴィジリオで火が灯された夢、そしてマイヤー、ワイアット、デ・ガスペリ、エルナンドらが築いた栄光を讃えながら。

WMTRC 2025 プレスオフィスマネージャー

出典 ITRA