国際女性デー特集:トレイル大会における女性ランナーの参画を後押しするガイドライン

― SheRACES × ITRA 共同ガイドライン 日本語版 ―

女性がもっと参加しやすい大会づくりのために

 トレイルランニングの世界では、短距離では女性参加者が増えつつあるものの、長距離レースでは依然として女性ランナーが少数派となっています。実際、2023年のデータでは、全トレイルレース参加者に占める女性の割合はわずか28%でした。特に50 km以上の長距離ではさらに低く、100 km超では15%にとどまります。

 そこで、ITRAは国際女性デーに合わせて、「SheRACES」と提携し、女性ランナーが安心して大会に挑めるようにするための具体的なガイドラインを発表しました。このガイドでは、女性の参加しやすさを高める大会運営のポイントが整理されており、すべてのレース主催者に向けて採用が呼びかけられています。

トレイルランニング大会の主催者へ
女性ランナーにとって参加しやすく、安心して挑戦できる大会とはどのようなものでしょうか?

女性が参加しやすいスタートラインの整備

● 多様なランナーの姿を伝える
広報やSNSでは、年齢や体型、経験の異なる女性ランナーの写真を意識的に取り入れましょう。自分も走れるかもしれない――そう思えるきっかけをつくることが重要です。

● わかりやすい情報提供
「過酷」や「限界に挑む」といった文言は、初心者や女性にとって壁になることも。代わりに、コースの累積標高や完走に必要な目安タイム、練習のポイントなどを具体的に伝えましょう。

● 柔軟な関門時間の設定
女性は比較的安定したペースで走る傾向があります。制限時間を厳しくしすぎると参加しにくくなるため、スタート時間の調整や入門者向けの配慮を検討しましょう。

● 安心感のある事前案内
アクセス、宿泊、更衣室やトイレの場所、荷物預かり、必携装備の詳細など、参加者が不安を感じにくいよう丁寧に案内を行いましょう。特に、初心者向けのQ&Aやコース試走会などは好評です。

● 出産・育児への配慮
妊娠・出産・授乳などにより参加が難しくなった場合、エントリーの繰り越しや返金の対応があると、多くの女性にとって安心材料になります。2年以内の参加振替など、柔軟な制度を検討しましょう。

● 女性枠や再抽選の仕組み
人気大会では、女性の当選率が低くなる場合もあります。抽選制の大会であれば、女性優先枠や外れた際の次回優遇(ポイント加算等)も有効な方法です。

女性が安心して走れる大会運営

● トイレや更衣スペースの整備
スタート、フィニッシュ、エイドステーションでは、女性専用のトイレや着替えスペースを明示しましょう。生理用品の設置もあるとより安心です。

● 安全対策の充実
女性参加者が夜間や山中でも安心して走れるよう、女性同士のペアラン、位置情報の共有、安全管理スタッフの配置などの工夫が求められます。

● フィットするウェアやゼッケン
Tシャツなどの記念品は、ユニセックスだけでなく女性用サイズの選択肢も設けましょう。ゼッケンは小柄な方にも配慮し、視認性と装着のしやすさを両立させてください。

● 授乳・搾乳への理解と配慮
授乳中のランナーが使えるように、椅子やプライベート空間を用意しましょう。必要に応じてサポートスタッフが対応できる体制づくりも大切です。

女性アスリートの力を正当に伝えるために

● 女性選手の活躍をしっかり伝える
大会レポート、速報、ライブ配信、写真撮影などで、男女ともに平等に取り上げましょう。結果発表でも、女性部門が見えづらくならない工夫が必要です。

● 公平なスタート位置の設計
エリート選手が後方に埋もれてしまわないよう、女子エリート専用のスタートエリアの設置を検討しましょう。

● 賞金・表彰の平等化
男女問わず、表彰の対象者数、賞品、賞金額は同じであることが望まれます。「公平であること」は大会全体の信頼につながります。

おわりに:より開かれたトレイルランニングを目指して

このガイドラインを参考に、より多くの女性がトレイルランニングに参加し、楽しめる大会づくりを目指していきましょう。それは大会の質を高めるだけでなく、スポーツの未来にもつながる大切な一歩です。