トレイルランニング運営ルール策定に向けた5つの視点

以下は、これから日本国内でトレイルランニング大会を主催するための運営ルールを作りをされる方に向けたアドバイスです。

持続可能な大会運営のために

トレイルランニングは、自然を舞台とした魅力的なスポーツである一方で、その運営には自然環境や地域社会、参加者との調和が欠かせません。これから運営ルールを策定するにあたって、以下の5つの視点からの取り組みが求められます。


1. マナーの明文化と理由の提示

トレイルランナーのマナーに対する苦言や誤解は、登山者や地域住民からも指摘されています。
「なぜダメなのか」という理由をルールとともに丁寧に説明することが重要です。例えば:

  • 「ゴミを捨ててはいけない」→ 分解に時間がかかり、野生動物に悪影響を及ぼすから
  • 「トレイル外を走ってはいけない」→ 植生破壊や侵食につながるから

【POINT】ブリーフィングや大会HP、SNSでの周知を徹底し、マナーは単なる禁止ではなく“守る理由”を伝えるルールとして明文化しましょう。


2. 地域社会との共存と経済循環の構築

大会は「地域との共創」が前提です。地域に受け入れられる大会を目指すには:

  • エイドの食材を地元産で統一
  • 地元宿泊施設との連携
  • 地元商店での「ランナー特典」の導入 など

【POINT】大会ルールに「地域の理解と協力のもとで開催される」ことを明記し、運営方針にも地域貢献の仕組みを取り入れましょう。


3. 自然環境への配慮と環境教育の導入

環境保全は「マナーの一部」であり、単独のルールとして扱うべきです。

  • マナーやルールをブリーフィングや資料に明記
  • 参加費の一部を環境保全団体へ寄付し、参加者にも伝える
  • 簡単な環境クイズや「マナー同意書」の提出を事前エントリー時に導入

【POINT】「自然を利用する責任」をルールとして明文化し、ルールを通じて自然への“感謝”を共有しましょう。


4. 若年層の巻き込みと大会文化の継承

大会運営の担い手や参加者層の高齢化が進んでいます。

  • 地元高校・大学へのボランティア募集や教育連携
  • SNSによる若者向けの情報発信
  • 初心者向けの短距離部門や親子参加型カテゴリーの新設

【POINT】 大会ルールや要項に「教育的価値」「地域と若者の関係構築」の観点を盛り込み、未来の担い手育成を視野に入れましょう。


5. トレイル整備とクリーンアップの義務化または奨励

トレイルは「誰かが整備しているから走れる」ものです。

  • 参加者に整備活動への協力を促す(任意ボランティアの案内)
  • クリーンアップ活動を大会前後に企画
  • 公式サイトで整備状況や活動報告を可視化

【POINT】 大会規則の一部に「利用者の責任としての保全意識」を明文化し、ルールの中に“トレイルを守る姿勢”を組み込みましょう。


最後に

持続可能な大会運営とは、「マナーを守る選手」「地域と共にある大会」「自然と共にあるルール」を育てることです。大会ルールは、その理念を伝える“言葉のインフラ”です。ぜひこの5つの視点を盛り込んで、愛される大会づくりに役立ててください。