世界マウンテン&トレイルランニング公式競技40周年

40年の歴史を祝して

 2025年6月20日、スペイン・カンフランクより、マウンテン&トレイルランニング競技の40年の歩みを称える公式リリースが発信されました。

 今年の9月25日、カンフランク=ピリネオスに世界中から80カ国・1,700人以上の選手が集い、マウンテンランニング公式競技の40年を記念する歴史的な世界選手権が開催されます。

スペインがこの大会を主催するのは今回が初めてであり、スペイン陸上競技連盟(RFEA)のもと、U20、アップヒル、クラシック、ショートトレイル、ロングトレイルの5種目すべてを網羅した統合世界選手権が実現します。

 この競技の歴史は1985年、イタリア南チロルの山岳地サン・ヴィジリオ・ディ・マレッベにて第1回マウンテンランニング世界選手権(当時の名称:ワールドトロフィー)が開催されたことから始まりました。主催は世界マウンテンランニング協会(WMRA)。それから約40年、今年9月、スペイン・ピレネー山脈でその頂点を迎えようとしています。

 当初はアルプスの斜面で始まったこの競技も、距離や年齢区分の拡張、関係機関との連携を経て、トレイルランニングとの統合に至りました。しかし変わらぬのは、選手が自らの脚力と心の力だけで山を登り、下るという“挑戦”の本質です。

 今回の大会は、その原点からの進化を象徴するもの。38人から始まったWMRA単独の大会が、今や約2,000人が参加する5種目の世界大会へと発展しました。現在は、WMRA、IAU(国際ウルトラランナーズ協会)、ITRA(国際トレイルランニング協会)の3団体による共同運営で、世界陸連(World Athletics)の傘下で行われています。スペインはこの記念すべき大会を誇りを持って初めて主催します。

世界マウンテン&トレイルランニング選手権の3つの時代

1985–2019:WMRAによる黎明期  登り(Uphill)、クラシック、ジュニア

 1984年、数か国のヨーロッパ陸連により設立された国際マウンテンランニング委員会(現WMRA)は、1985年にイタリア・サン・ヴィジリオで第1回大会を開催。1,000mを超える急登のみの「アップヒル」と、登り下りを組み合わせたハーフマラソン程度の「クラッシック」の2形式で交互に行われました。

 その後、6~8kmのジュニアレースが導入され、さらに「ロングディスタンス」形式(約45km)も追加されました。アンドレア・マイヤー、マルコ・デ・ガスペリ、ジョナサン・ワイアットといった名選手が、この時代の象徴となりました。

2007–2019:IAU・ITRAによる超長距離への拡張

 WMRAは2004年にSierre-Zinalでロングディスタンスを導入していましたが、真の「ウルトラ」時代の幕開けは2007年、IAUによる80kmのTrail世界選手権(アメリカ・テキサス)開催でした。

 2015年にはITRAも合流し、超長距離レースの地位を確立。スペインのルイス・アルベルト・エルナンドは3連覇(2016〜2018)を達成し、フランスのナタリー・モークレールは初の女子ダブルゴールド(2013・2015)を記録しました。

2019–2025:世界陸連による統合の時代

 2019年、世界陸連がマウンテン&トレイルランニングを正式に認定。WMRA・IAU・ITRAの協力により、隔年開催の統一世界選手権「WMTRC(World Mountain & Trail Running Championships)」が始動しました。

 第1回統合大会は新型コロナの影響で延期され、2022年11月にタイ・チェンマイで開催。以下の5種目すべてが一つの大会として実施されました。

• U20

• アップヒル

• クラッシック

• ショートトレイル(約45km)

• ロングトレイル(約80km)

 2023年はオーストリア・インスブルック/シュトゥーバイ、そして2025年はスペイン・カンフランク=ピリネオスに舞台を移します。

王者たちの系譜 ― 4人の伝説的アスリート

 過去40年で、世界の舞台を彩った4人の選手がいます。

アンドレア・マイヤー(オーストリア)

WMRA最多8度の世界王者。2024年Uphillでも優勝。

ジョナサン・ワイアット(ニュージーランド)

クラシック形式で6度の世界制覇を成し遂げた伝説的存在。

マルコ・デ・ガスペリ(イタリア)

ワイアットの最大のライバルであり、技巧派ランナーの象徴。

ルイス・アルベルト・エルナンド(スペイン)

IAU/ITRA体制のウルトラ競技で3連覇を果たした王者。

カンフランク=ピリネオス2025へ向けて

 1985年の小さな山村での始まりから、マウンテンとトレイル、スピードと持久力、若さと経験が交差する世界規模の競技へと成長してきたこの選手権。その原点には、すべての選手の汗と挑戦の軌跡があります。

 2025年9月、カンフランクの地で新たな章が始まります。サン・ヴィジリオで火が灯された夢、そしてマイヤー、ワイアット、デ・ガスペリ、エルナンドらが築いた栄光を讃えながら。

WMTRC 2025 プレスオフィスマネージャー

出典 ITRA

国際女性デー:トレイルランニングにおける女性の参加

ITRAは、女性の平等を推進するSheRACESプロトレイルランナー協会の作業部会と連携し、トレイルランニングにおける女性参加者の増加に向けて、国際女性デーとなる3月8日に提言がおこなわれました。

© Jordan Manoukian

トレイルランニングと女性参加者

この中ではトレイルランニングにおける女性ランナーの参加促進が課題となっています。ほとんどのトレイルレース、特に長距離種目のスタートライン立つ女性ランナーは少数派となっています。

2023年の統計では、世界のトレイルレース出場者に占める女性の割合は28%にすぎません。10km以下の短距離では42%でしたが、50kmで23%、100km超の長距離レースでは15%と低下しています。

この素晴らしいスポーツに女性が十分参加できていない状況は、大会主催者側も多くの出場者を逃している要因にもなっています。

そこでITRAは、女性を積極的に受け入れるためのガイドラインを策定し、すべての公認レース主催団体と共有をおこないました。SheRACESと協力して作成されたこのガイドラインでは、女性にとってより魅力的な大会運営の在り方が提示されています。

SheRACESガイドライン[英語版]

女性トレイルランナーの参加促進に向けた取り組み

トレイルランニングは自然の中で行われる競技です。その歴史は男性中心でしたが、女性にも気兼ねなく参加できる環境を整備することが重要となります。主催者には、女性のニーズに合わせた企画、女性の視点を伝える広報、居心地の良い会場作りなどが求められます。

日本トレイルランニング協会としても、ガイドラインの内容を精査し、女性ランナーが気軽に楽しめる大会を主催者側に目指していただけるよう、ガイドラインの作成に取り組んでいく所存です。

出典:ITRAオフィシャルサイト https://itra.run/News/Article?id=fd08b3e2-280e-4956-8a9a-d553d5aff556

国際女性デー( International Women’s Day):女性の地位向上、女性差別の払拭等を目指す国際的な連帯と統一行動の日。毎年3月8日にあり、国際デーに制定されている。