どのようなスポーツなのか
陸上競技の長距離走の一種であり、様々な種類の地形 (砂地、土の道、林道、一人しか通り抜けられない森の小道、雪道等)や環境(山、森林、平原、砂漠等)で行われるスポーツである。

競技(レース)について
競技の内容によってトレイルランニングやマウンテンランニングに分類される。
これらが行われるレー スは主に未舗装のオフロードで行われるが、コースの一部が舗 装(アスファルト、コンクリート、砕石等)されていても構わ ないものの、最小限の距離に抑えられている必要がある。既存の道路や小道をできるだけ使用する。
標高の高い山を登るよう な特別な登山技術や登山用具、特殊な装備等を使用するものでは ない。コース上には競技者が地図を読むような特別な技術を必要とせず、容易に認識できる標識を設置しなければならない。また距離や高低差は種目により規定されるが、距離設定の制限に上限がないことから数百キロに及ぶ距離で競われるレースも存在する。またコースは自然環境に合わせて走るように設置されたものでなければならないとしている。
世界中でおこなわれている選手権では、以下の4つの競技種目に分類されています。
Trail Running:
1.ショートトレイル: 数キロメートルから約50キロメートルの距離。森林や丘、山などの登山道や林道で行われる。初心者も参加しやすい。
2.ロングトレイル: 50キロメートル以上の距離。険しい山道や荒地で行われ、完走には数時間から数日かかることもある。高レベルのトレーニングが必要。
Mountain Running:
3.アップヒル(バーティカル): 上りのみの競技。短い距離で大幅な標高差を上る。急勾配で挑戦的なコース。
4.クラシック アップ&ダウン: 上り下りが激しいコースを走る。距離は10キロメートル程度。上りと下りの両方に重点を置く。
これらは世界選手権やアジアやヨーロッパでおこなわれる地域選手権で採用されています。

世界での歴史 World History
起源: 短距離でも長距離でも速く走りたいという欲求は、人類と同じくらい古くから存在しています。速く走ることは、生き延びたり、食料として動物を捕まえたり、戦いのため、危険や自然災害から逃れたり、誰かにメッセージを届けたりするのに役立ちました。道路も、トンネルも、橋も無かった太古の時代には、できるだけ速く山を越え、森を抜け、川を渡らなければならなかったことが、トレイルランニングの起源といえます。
中世から近代: 山岳レースに関する最古の記述は1068年にスコットランドの王が最も有能な伝令者を選ぶために、誰が近くの山を最速のタイムで上り下りできるかをテストしたものです。1895年には、現在も続いている最古の山岳レース(Fell running)がイギリスで開催されました。
20世紀: アメリカ合衆国でのアウトドア文化の発展と共に、トレイルランニングが一般的になりました。特に1960年代から1970年代にかけて、ウルトラマラソンやマウンテンランニングのイベントやコミュニティが登場し、トレイルランニングの人気が広がりました。
1970年代以降: カリフォルニア州オーバーンでトレイルランニングの大会が開催されたことから、この地域はトレイルランニングの発祥地とされています。以降、トレイルランニングは世界各地で人気を博し、多くのイベントや大会が開催されるようになりました。自然の中を走ることで、健康を促進し、アウトドア体験を楽しむ人々にとって魅力的なスポーツとして広く愛されるようになりました。
2024年: 国際トレイルランニング協会(ITRA)は「トレイルランニングのオリンピックとパラリンピックのレガシー」(Trail Running’s Olympic and Paralympic Legacy)と題したプレスリリースを発表し、トレイルランニングをオリンピック及びパラリンピックの正式種目とするための取り組みを進めていることを明らかにしました。具体的には、2032年にオーストラリア・ブリスベンで開催予定のオリンピック、パラリンピックでの採用を目指しています。
日本での歴史 Japanese History
日本では、1913年に静岡県御殿場市で開催された富士登山競走や、1947年の第2回国民体育大会(石川国体)の縦走競技(パックに荷重を背負い、標高差の大きい自然の山岳を走る競技)など、「山岳マラソン」や「登山競争」と呼ばれる文化が早くから存在していました。
1990年には山田昇記念杯登山競争大会(上州武尊山スカイビュートレイルの前身)が国体と同様の縦走形式で行われ、1993年には日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)が開催され、これが現在の国内トレイルランニングの原点となりました。
2000年代以降、「トレイルランニング」の名称を冠した大会の開催が急増する中、2005年に雑誌「ターザン」でプロトレイルランナーの石川弘樹が『トレイルラン』という言葉を初めて日本のメディアで紹介しました。さらに、2009年に行われた海外レース(UTMB)での鏑木毅の活躍が翌年にテレビで放映され、トレイルランニングの知名度が高まり、一般化していきました。
国際大会関係 International Events and Competitions
トレイルランニング競技における国際大会は、「世界選手権(World Championships)」および「アジア太平洋選手権(Asia-Pacific Championships)」が主要な位置づけを持つ。これらの大会は、陸上競技における「世界陸上競技選手権大会(世界陸上)」や「アジア陸上競技選手権大会」に相当する国際的な公式競技会として位置付けられている。
世界選手権大会は、世界陸上競技連盟(World Athletics)および国際トレイルランニング協会(ITRA)と他2つの競技団体が主催し、加盟各国の陸上競技連盟を通じて国家代表チームが派遣される。日本からは、日本陸上競技連盟(JAAF)によって正式な「日本代表」として選手団が編成されており、オリンピックや世界陸上と同様に国家代表としての実績を有する。
一方、アジア太平洋選手権は、アジア・オセアニア地域の競技者を対象とする地域選手権であり、日本トレイルランニング協会(JTRA)が中心となって代表派遣を行う。この大会は、陸上競技における「アジア選手権」に相当する地域的な位置づけを持つ。

世界選手権大会の代表選考
世界選手権への代表選考は、日本陸上競技連盟によって行われる。選考対象は、
・直近の世界選手権およびアジア太平洋選手権での上位入賞者
・国内で開催される指定選考競技会の上位入賞者から構成される。
選考方針としては、「世界選手権においてメダル獲得または入賞が期待できる選手」を中心に編成され、日本陸上競技連盟が正式に派遣する。
アジア太平洋選手権の代表選考
現在の選考基準では、アジア太平洋選手権については、日本トレイルランニング協会が代表選考を行う。選考基準は、国際トレイルランニング協会(ITRA)が提供するランキングに基づき、
・指定された競技種目のITRAランキングにおいて日本人最上位
・かつアジアランキングで10位以内に入る選手
が原則として選考対象となる。
この基準により、「アジア太平洋選手権でメダルまたは入賞が期待できる選手」が選出され、日本トレイルランニング協会が正式に派遣する。